ボールペンのクリップに小さな太陽が宿った。
真っ昼間、まぶしいくらいに明るくてあたたかい光が、古い机がとんとんと並べられた図書館に注がれている。
抱えたもやもやを書いて、自分の考えを整理しようと思い立ち、お気に入りの銀色のボールペンを取り出した。すると、そのボールペンに光が生きているように宿った。
さて、まずは日付から書き始めようと、ペンをノートに触れさせたら、そこに光の環っかができた。光の線が二重になっている、と思った。でも、そう言ってしまうのはどこか失礼だと感じた。二重に見えたそのリングは、それぞれひとつずつのリングとしてとても美しく綺麗だったから。
ノートからペンをゆっくり上へ離してみる。するとリングはどんどん大きくなって、さっき見ていたリングの中に私も溶け込んでしまったようだった。
銀色のボールペンが受け取った太陽の光は、金色のリングになって私のノートと私を照らしてくれていた。金色のリングは壁にも、机にも、少しずつ大きくなって光をふりまいていた。
キラキラと光り続けるボールペンで書き続ける。少しずつ元気になってきたのはこのボールペンのおかげだろうか。窓からの光は私のボールペンに話しかけている、ボールペンは金色の環っかを揺らしながら返事をする。
そんな会話を、私は書きながら聞き続ける。シャラン、シャリン、と聞こえたような気がしながら。
私がペンを動かせば、ボールペンはあらゆる模様を机の上に映し出す。それはリングだったり、ダイヤモンドのようなカットだったり、ときにはやわらかいレースが映っていることもあった。
私は、ペンが映し出す絵をコントロールすることができない。もちろんその絵をつくる太陽の光りも。それでもペンは私の想像しない絵をたくさん、飽きることなく見せてくれる。
窓が見守る光と影のレース、それを切り取ってどこかに保存しておきたい。このレース、ワンピースの襟につけたらきっとかわいいのになあ。
この短い時間の間に、太陽の光りと対話して、いろんな絵を表現してきたボールペン。今まで以上に愛しく思えてきた。
ボールペンと昼間の太陽と過ごした時間、たったそれだけ、たったそれだけなのに、気づいたら私はあたたかい気持ちでいっぱいだった。このボールペンには小さな太陽が宿っていたんだと感じた。
さて、今日の午後に向かおう。
抱えていたもやもやした気持ちと正反対だった太陽の光り、そこを去るときには元気になって、心の中には小さな太陽が宿ったようだった。
きっと、その小さな太陽は、ボールペンのクリップに宿った太陽だったんだと思う。