月の葉っぱ

夜明けはもうすぐそこに。

名前の思い出

 小学生の頃に流行った、名前の文字数で天国地獄を決める遊びがあった。私の名前は合計で6文字。天国地獄大地獄を2回繰り返すともちろん大地獄になる。その時私は、大地獄になることがとても嫌で何度も両親に名前の最後に「子」をつけてほしいと言った。子をつければ天国となるから。その時の父の表情と言ったらこの上なく暗く沈んでいた。今思い出すと、名前が6文字の人なんて大勢いる。たったそれだけで名前を変えたいなんて今思うとこわくて仕方がない。あの時、両親が名前を変えようと思ってくれなくて本当によかった。画数も漢字も何度も何度も時間をかけて考えた名前を、私のたった一言で変わってしまうことなんてなくてよかった。でも、その時はその時で、名前の文字が大地獄なんてこの先怖くて、どうしても天国の文字数にしたかったのだと思う。何度も名前を変えたいと言い続けたのはきっとほんの数日だったかもしれない。その遊びが流行っていた期間だけだったのだろう。私にとってその数日は、これからが大地獄なのかと沈み、両親にとっては名前を変えたいなんてと心から悲しかったのだと思う。あの時間は私にとってどんな意味があったのだろう。そして、名前を変えたいと言われた悲しさを受けた両親にとって、あの時間はどんな意味があったのだろう。なぜ名前を変えたいか、その理由を言えばよかった。そうしたら、なんだそんなこと、と悲しまずに済んだのに。