わたしはただ聞いていて、
知らなかったから「それ、なに?」とたずねた。
そしたら、
まるで「なに言ってるの?」と
いわんばかりの表情で、
さっきまで明るく話していた顔が一瞬で青銅の像のように。
知らなかった、だから聞いただけなのに。
知りたいと思ったから、聞いただけなのに。
とつぜん、そのフィールドに入らないでと言われたかのように
線引きされたように感じた。
知らないことはたくさんある。
私の知ってることなんてほんのちっぽけ、
そう知っている。
あなたのフィールド内で話すことは
もちろんあなたは詳しく知っている。
でも、だからといって
相手も深く知っていると思うのは、ちがう。
私が「知らない」というたびに、
目を見開くひとがにがて。
にがてだ。
どうしても。
きっといつまでも受け入れてくれないから。