月の葉っぱ

夜明けはもうすぐそこに。

音と香りあつめ

アラームの音

 

リュックが開かれる音

物が詰められていく音

リュックが閉じられる音

 

階段を降りる音

静かな朝のリビングに飛び交う「おはよう」

朝の静かな話し声と、あたたかい朝ごはん

静かで、あたたかい香りのする朝

 

靴を履く音

ドアを開く音

ドアを閉じると、朝の香り

静かで太陽の光の音、香りだけがそこにいる

 

歩く音

道にひろがる金木犀の香り

 

心があたたかく、やわらかくなる音 

イヤホンをはずすと香るたくさんの香り、音

 

風の音

こわれかけのイヤホンのがさがさ音

 

 

駅に着く。

電車がくるアナウンスの音

電車がむかってくる音

到着した音。

 

電車内のむわっとした香り

電車が進む音

電車内のアナウンス音

 

人が動く音

 

扉が開く音

 

 

リュックにイヤホンが絡まる音

 

川の音、川にかかる太陽の光の音

太陽の光の香り

 

風景が電車を吸収していく音

線路が風景を吸収していく音 

 

イヤホンからきこえる、

つくられたリズムのよい歌の音

 

大人数がかいだんを移動する音

 

 …

 

授業がはじまる前の静かな音

扉が開く音

まだ続く話し声

 

「おはよう」の声

 

 マイクの音

教室に響く教壇に立つ人の声の音

 

消ゴムの音

ふでばこが開かれ動かされ中身を出され

閉じられる音

 

シャープペンの音

 

チョークが黒板で削れていく音

 

考える音

寝息の音

ルーズリーフが取り出される音

メモする音

走り書きする音

遅れて来る靴の音

 

ほんのときに鳴る着信音

発された雑談で空気がゆるみ、

ちょっとした笑い声

 

そして、静かな一時間半が過ぎる

水風船がはじけたように

教室にあふれる話し声

片付ける音

次の教室へ急ぐ足音

話続ける音

 

ひるの音。

まぶしいくらいの日差しの音と香り

 

食堂の音

あらゆる声が混じっていて、

ひとつの言葉に聞こえない

まるで違う言語圏のよう

 

いろんなごはんが、いろんな香りになって

ただよっている

 

 

図書館の音

館内を人が歩く音

誰かが本を選ぶ音

誰かが紙をめくる音

 

 

ものを動かすだけで響く音

 

椅子を動かす音

 

自分の音、うまく聞こえないけれど

聞こえてくる

これはだれの声だろう

夢の中の声

これは自分の声?誰か他の人の声?

 

 

夕方のどこか物足りない感じ 

音も香りも、

朝からするとすっかり枯れてしまったよう

 

電車の中には

イライラしている声の音

ハイヒールの鳴り響く音

怒鳴る声、優しい声、子どもの声

学生のローファーの音

ものが落ちる音

 

テキストを出す音

テキストを開く音

 

 悪口の音に、

 無邪気な声、無邪気な音

複雑なものをかかえた声と音

 

物思いにふける音

ため息の音

 

進路について語る不安げな声

進路について語る楽しげな声

 

おばあさんたちの楽しい笑い声

嬉しそうなにこにこ笑顔の音

 

懐かしい人にあった懐かしい香りと音、

 

にらむ人のビリビリ音

舌打ちの音、嘲笑の音

 

画面をタップする音、

画面をするするめくる音

 

ウェブページを開くと

文面にあるとげとげした音

 

停車中の電車の音

傲慢な声の音

 

 

信号の音

 

 

雰囲気からにじみ出る優しい音

雰囲気からにじみ出る不安げな音

 

幸せな、イライラな、あたたかい、音

 

心からのあたたかい声に

表面だけのざらついた声。

 

人と話していると、聞こえない音の数々

 

自分の心が高まる音

自分の心が不安げにゆれる音

 

 

あたたかい笑顔の音

作り笑顔のひんやりした音

 

 

葉っぱが重なりあう優しげな音

 

夕日の香り、夕日の音楽

夜の静かな香り、夜の音

 

秋の音、秋の香り

冬の音、冬の香り

 

道が開けていく音

 

山に注ぐ光の音

山に注ぐ光の香り

 

 

音の一日、香りの一日